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舞台『ともだちが来た』

舞台『ともだちが来た』

ともだちが来た | 浅草九倶楽部/浅草九劇


浅草九劇にて観劇してまいりました。
めっっっっっっっちゃ良かった……
本当はオンライン配信前にブログ書いて一人でも多くの方に見てほしかったんだけど
あまりに言葉が見つからずに結局千秋楽後に書いてるよね



【あらすじ】
暑い夏の日、〈私〉の前に、突然たずねてきた〈友〉
「俺は、覚えていてほしいんだよ。おまえに。」蒸し焼きにされそうなある夏の日。
畳の上で部屋着姿のまま床にはいつくばる「私」の前に、高校時代の同級生「友」が現れる。
話を聞くと、自転車に乗ってずいぶん遠くから走ってきたという。
久しぶりの再会に喜ぶ二人は、じゃれあうように会話を楽しむ。
しかし、ふとしたはずみで出る「友」の言葉は、二人の間には埋めることのできない大きな溝が横たわっていることを気付かせる。
「友」は言う、「俺のこと忘れないでいて欲しいんだよ」二人の長い長い、別れ話が始まる-。
(公式サイトより)

少し神経質だけれどなんだかんだで人とうまく付き合えている
私と
すこし奔放で不思議でそれ故に世間とうまくやっていけない友人
友人同士のこの二人が夏の暑い日に織りなす不思議で切ない70分の舞台です

日本劇作家協会の運営する「戯曲デジタルアーカイブ」で
台本の閲覧ができるので気になる方はぜひ

playtextdigitalarchive.com



【出演】
稲葉友大鶴佐助泉澤祐希
この舞台配役のシステムがとても面白く
毎日コイントスで私か友かを決定します
なので運次第では見られない組み合わせもあるという…若干シビア
千秋楽の公演配信では出演者もトスで行い、配役もトスで決定なので
かなりドキドキの千秋楽となっております


【11月4日19時回:私/大鶴×友/稲葉】すごくネタバレ含む私的あらすじ
浅草九劇かなりせまい劇場で私が以前行ったときは120席程度の座席構成だったのですが

今回はなんと50席程度の座席構成。そしてちゃんと満員
もっと入れたらいいのにと…おもったけど公演後いや…この人数で正解だわと
この日は私/大鶴くん×友/稲葉くん。稲葉くんはハイローとかで存じてたのですが
大鶴くんがお初でした!
稲葉くんの達者さは存じていたのですが初めましての大鶴さんが兎に角巧い
ぼそっとつぶやくようなセリフでもきちんと声が客席に届くんですよね…
ちゃんと届くのに呟いているようにも聞こえるし、基礎がしっかりしているというか…
気になって調べたら芸歴15年の大ベテランさんでした、すごい

さて本編ですが畳の部屋、麦茶、半袖、うちわ、自転車、蝉の声。舞台セットは簡素にこれのみで
大鶴くんの私が板付きで、暑さに沸騰した頭で一人哲学的な独り言を吐きはじめ
そこに自転車で稲葉くんの友が訪ねてくるところから話は展開していきます
訪ねてきた稲葉くんの友は明るく自由で、まるで私とは対照的
この段階では私の方がかなり偏屈で、友達なんて居ないように見えるのがとてもいい
私だったらぜっっったいに友達になりたくないもんこんな奴
ところが話が進んでいくと実は私はなんだかんだで上手くいっていて
友の方が俗世間から浮いてしまっているというのがわかってくるんですよね
最初にとっつきづらい私の姿と明るい友を見せておいてからのこの展開は上手だなと…。
そこから二人は昔の思い出話に花を咲かせるのですが
若干感じる2人の間の違和感、
熱くて溶けそうだというのに一向に麦茶に手を伸ばさない不自然な友
ぽつりと「なんで来た」という私に対して「お別れを言いに来た」と友は告げます
友は一週間ほど前に亡くなっており、最後のお別れを私にしにきたのでした
ここから明るくて切ない二人のお別れの時間がはじまります

正直最初は板付きで出てくる私は偏屈だし途中で出てくる友も変だし
かなりわけわからん戯曲だな…とんでもないもの見に来ちゃったか?という感じだったのですが
友が亡くなっているとわかってからはかなり引き込まれてしまいました
一週間前に死んだという台詞があったのでおそらく初七日なのですが
どうやら友の家庭で信仰されている浄土真宗では他仏教とは違い
初七日は故人への感謝を捧げ親交を深める日という意味があるそうで
天邪鬼な友は自分から行ってやろう!と私の元にやってきたのかなと…感じました。
(この辺間違ってたら大変申し訳ないです)

友達がいないと言う友が最後に会いに行ったのが家族でもなんでもなくて私だったのがマジでいい。
友は「友達がいない」と言い張り私の事を一度も友達とは呼称しないけれど
きっと二人はお互いに言わないながらも、親友であっただろうし
私にとっての友は紛れもない友達だったから
作品タイトルが私からの視点で『ともだちが来た』ってのがエモの塊

公演時期は10末から11月頭だったのですがこれぜっっっったいに夏に見たい!!
終演後に会場から出て感じる蝉の声と溶けそうな暑さが
きっといつもとは一味違うように感じると思うので…
あと夏休みの学生に見てほしすぎるよ本当に…

公演も配信も終わってしまい見る手立てはもうないのですが
もし再演した際には絶対まわりに勧めるだろうし、絶対に見に行く作品のひとつになりました
推し、やってくれないかな…(結局それ)